8.6 / ザ・サーファーズ・ジャーナル日本版

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フィーチャーストーリー
今号のオリジナルコンテンツは、抱井保徳による湘南のストーリーだ。抱井は1956年、千葉県沖津生まれで、中学1年のときに守谷海岸でサーフィンをはじめ、1975年に湘南に移り住み、以来40数年この地に住み湘南の海と波を見つづけてきた。そんな彼がシェープ工場へ自転車で通う道すがら、見てきた第二の故郷、湘南を綴った。

SHONAN, A BICYCLE KIND OF LIFE
「湘南 by 自転車」
ボヘミアンサーファーの湘南
文:抱井保徳
1972年。自分は千葉・鴨川のノンキー・サーフショップに保護されていて、ショップの仕入れと湘南のサーフィン事情視察のために、オーナーの野村久之、そしてショップ・アドバイザーの加藤友路の両氏に連れられ東京湾を渡り、そしてルート的に最初に出くわしたのは逗子海岸だった。
もともとここは「太陽の季節」系ビーチカルチャー発祥の地なのだから、そのへんからもうじゅうぶんに湘南だった。もちろん波はフラット。湘南はまず波がない、と聞いていたとおりの海で、だからそんな波と疎遠な海岸線沿いに自分が暮らすようになるとは、その時点では思いもしなかった。

つづいてのストーリーは、オーストラリア東海岸の理想郷、アンゴーリだ。この地は白人が入植するはるか以前、何千年にもわたって先住民族ヤエグルのホームランドとして栄えた。エスチュアリー(三角江)や湖、そしてヘッドランドに恵まれた沿岸部に位置し、豊富な魚介類や薬草に支えられて、ボヘミアンサーファーたちはひときわ大きなコミュニティを築いたのだ。

Angourie In Their Hearts
「アンゴーリ」
初期のオージー・サーファーたちの理想郷
文:スティーブ・シアラー、写真:アル・マッキノン
「もしもアンゴーリが存在しなければ、それを創りだす必要があるだろう」18世紀フランスの啓蒙思想家、ヴォルテールの一節を拝借すれば、こうなる。そのあまりにもアイコニックな情景は、見る者の脳裏に焼き付くほどだ。見るというよりも、感じとるというべきだろう。みずからの記憶を呼び覚ますかのように。秋の日差しのなか、サンダー片手に新しいショートボードを削りだす、塵まみれのバディ・トレロア。手を休めて、ウィッツグの映画『モーニング・オブ・ジ・アース』のサントラを口ずさみながら、ポイント周辺をひと走りしていると、サーファーが無人のラインナップを見下ろしながら、独りぼっちで険しい小道を降りてくる。手塗りの看板を出して採った魚をその場で販売しているのは、海の恵みが豊かな証だ。スティーブ・クーニーは太陽に照らされた川面にフィッシングラインを投げ入れ、クリス・ブロックはサーフセッションの後、無人のヘッドランドにこしらえたツリーハウスで一息つく。背後から太陽の光を浴びてベイトフィッシュの群れが浮かび上がった波は、岬を巻いてごつごつした入り江に押し寄せてくる。

Jughead
「ジャグヘッド」
常に世界から注目をされてきた、消防士でありビッグウェイバーのジャスティン・あるポートに訊く、真のスラブハンターの心構え
文:ジェド・スミス
「おれはかつて、“ビッグウェーブ・サーファー"と崇められるやつらを羨ましく思ってた」そう語りはじめたのはジャスティン“ジャグヘッド"アルポート。私たちは、物が溢れかえる彼のガレージを物色していた。「でも、あいつらは7フィートのボードなんて持ってないだろうな」
ニューサウスウェールズ州セントラルコースト郊外の平凡な通りに面した平凡な家には、彼の狂気の沙汰を連想させる要素はみじんもない。だが、ガレージのなかは別世界。ここはカオスだ。史上最強のヘビーエストウェーブに身ひとつで挑んだ際に使われたサーフギアがあふれかえっている。彼はそのひとつひとつを私に説明してくれた。
まずは天井に吊るされたビッグウェーブ用のパドルガン。つぎにガレージ中央で荷物の下に眠っているジェットスキー。「トウインはもう古い」との理由で、いまではほとんど使っていないという。散らばる短い板は4人の子供たちのもの。隅のトウボードは、彼がゴーストツリーで脚を5カ所同時骨折したときに乗っていたものとおなじデザイン。彼の饒舌は止まらない。

Not Up to Code
「基準不適合」
ウォルター・コーカーの紆余曲折の人生とサーフィン、そしてジャーナリズム
文:マイケル・アドノ
北フロリダのサマーヘブン川と大西洋に挟まれた細長い陸地。マングローブと牡蠣の殻に覆われた川辺が浮いたり沈んだりしている。ハンモックが吊り下がる樫の木とサバル椰子に視線を戻すと、この土地には十二分に価値があることがわかる。大西洋は石を投げれば届くほど近い。61歳のウォルター・コーカーはこの細長い陸地に佇んでいた。小型ボートがエンジン音を響かせながら接近してくる。私たちはそのボートが通り過ぎるのを見送った。大西洋に飲み込まれ沈んでしまった家屋のほうへそれは向かっていった。朽ち果てた造船所の廃墟が砂上にあり、だれかの所有地であったことを示している。

NOBLE ROT
「貴腐の香り」
写真家ロブ・ギリーによって熟成されたレアなショットのかずかず
文もロブ・ギリー
葡萄という果実が成熟する段階において特別な現象が発生することがまれにある。それは貴腐葡萄と呼ばれ、糖度がひじょうに高いのが特徴だ。この希少な価値ある現象は、不規則な自然環境が誘因となって起こり、適切に醸造すればすばらしいデザートワインとなる。これはまったくの自然現象として発生するので、ワイン醸造家が意図的にコントロールすることは不可能だ。言い方を変えれば“神からの賜物"なのである。
最近、それとおなじことが私の写真にも起こった。数千枚におよぶ古くなって無視してきたスライドフィルムをいくつか選んで眺めてみると、期待さえもしていなかったのに時間の経過によって進化熟成してきていることに気づいた。この原因を洞察してみると、自然の環境要因が私の写真技術を凌駕したことが結論として残った。つまり貴腐葡萄のような想定外の事象が、写真にも不可思議に起こったのだ。

GROUP SHOW
新進気鋭からベテランまで、TSJゆかりの写真家たちのグループ展
リック・アダムス、スティーブ・バッコン、スコット・バウアー、コーバン・キャンベル、トム・キャリー、アンドリュー・チゾム、マット・クラーク、ウッディ・グーチ、ニック・グリーン、ジェレマイア・クライン、レーザーウルフ、アル・マッキノン、ブライアン・ネヴィンス、ダミアン・プレノ、ダニエル・プーレン、コーリー・スコット